倉敷芸術科学大学 楢村友隆 准教授〈光脱毛と医療脱毛の違いとは?専門家が語る安全性・効果・選び方のポイント〉

倉敷芸術科学大学 生命科学部環境生命科学科 楢村友隆准教授に独占インタビュー

近年、SNSや広告で目にする機会が増えた「医療脱毛」や「美容脱毛」、さらには「永久脱毛」という言葉に惹かれて、脱毛を始めようと考えている方は多いのではないでしょうか。

しかし、実際に脱毛を受けるにあたって、脱毛の定義や各方法の違い、クリニックの見極め方を知らずにいると、予期せぬトラブルに巻き込まれてしまうことがあります。

そこで今回、倉敷芸術科学大学の楢村友隆准教授に、光脱毛と医療脱毛の違いや効果、後悔しない脱毛選びの方法について独自取材を通じてお話を伺いました。

脱毛で後悔しないためのポイントを、楢村准教授のお話から探っていきましょう。

インタビュイーの紹介
倉敷芸術科学大学 生命科学部環境生命科学科 楢村友隆准教授

倉敷芸術科学大学 生命科学部 環境生命科学科
楢村友隆(ナラムラ トモタカ) 准教授

日本メディカル工学専門学校 臨床工学科卒業。九州保健福祉大学大学院保健科学研究科にて博士(保健科学)を取得。

臨床工学技士免許を取得後、病院勤務を経て、千葉科学大学危機管理学部助教、純真学園大学保健医療学部講師、東亜大学医療学部特任准教授、2019年より倉敷芸術科学大学生命科学部にて准教授を務める。

〈研究分野〉
血液浄化学・美容工学

〈著書・論文〉
「よくわかる脱毛“後悔しないサロン選び”」(2023年:監修)
「透析液水質管理の基礎知識」(2021年:単著)
「血液浄化機器2020」(2020年:共著) など

目次

医療脱毛と美容脱毛はどう選ぶ?定義と仕組みを整理する

カードローンの窓口合同会社 編集部:近年注目されている医療脱毛と美容脱毛ですが、「まったく別物だ」と語られる一方で、「定義が曖昧」といった声も聞かれます。

このように医療脱毛と美容脱毛の線引きが不明瞭とされる背景には、どのような事情があるのでしょうか?

楢村准教授: 定義が曖昧と言われている原因の1つは、クリニックやサロンのホームページに記載されている内容のばらつきです。

ホームページの中には、脱毛に詳しくない方が執筆しているケースもあります。このように、書き手の脱毛に対する理解度がそれほど高くないと、医療脱毛と美容脱毛の定義が混在してしまいがちになるのです。

この2つの区別が不明確なままだと、実際に施術を受ける方も正しい知識を持たないまま脱毛を受けてしまう可能性があります。

後ほど詳しくお話ししますが、脱毛は仕組みをきちんと理解しておかないと、期待していた効果が得られなかったり、トラブルにつながったりすることがあります。そういった事態を防ぐためには、施術を受ける前に、両者の違いをしっかり把握しておくことが大切です。

カードローンの窓口合同会社 編集部:なるほど。では、実際に医療脱毛と美容脱毛にはどのような違いがあるのでしょうか?

楢村准教授:両者の大きな違いは、「施術で毛乳頭などを破壊するかどうか」にあります。

医療脱毛とは、簡単に言えば毛根や毛を生やす組織(毛乳頭やバルジ領域など)を破壊する行為を指します。日本では過去の国からの通知により、「強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭などを破壊する行為」は医療行為と定義されています。

つまり、「どこで施術を受けるか」「どんな機械を使うか」よりも、「毛を生やす組織を破壊するエネルギーを用いているかどうか」が、美容脱毛と医療脱毛を分ける基準になるのです。

カードローンの窓口合同会社 編集部:一般には「病院でレーザーを使うのが医療脱毛」「サロンで光を使うのが美容脱毛」と思われがちですが、本質的には照射の強さや作用が決め手になるのですね。

楢村准教授:そうですね。たとえ病院でレーザーを照射していても、出力が低くて毛を生やす細胞が壊れなければ、それは医療脱毛とは言えません。

カードローンの窓口合同会社 編集部:病院で受ける脱毛であっても、医療脱毛に該当するかはまた別の話なのですね。私自身、「病院で受ける脱毛は医療脱毛、サロンで受ける脱毛は美容脱毛」という曖昧な認識でした。

楢村准教授:実際、そう考える方も多いですね。「医療」と名がつくことで誤解が生じやすいのだと思います。

カードローンの窓口合同会社 編集部:ありがとうございます。続いて「永久脱毛」についてお伺いします。多くの人は「永久脱毛=二度と毛が生えてこないこと」と考えていると思いますが、実際のところ、永久脱毛とはどういう意味なのでしょうか?

楢村准教授:実は、日本国内には「永久脱毛」に関する明確な定義は存在していません。

日本で使われている「永久脱毛」という言葉の多くは、アメリカで定められている基準に準じているのです。

アメリカには永久脱毛に関する定義が2つあります。1つ目は、FDA(アメリカ食品医薬品局)が示すもので、「長期的に安定して毛の量が減少すること」と定義されています。

つまり、ご指摘のような「一生毛が生えてこない」という意味ではなく、あくまでも「毛が減った状態が長く続いていること」がポイントになります。

カードローンの窓口合同会社 編集部:なるほど。ちなみに、「長期的に安定して」という部分に関して、具体的な数字は示されているのでしょうか?

楢村准教授:はい。FDAでは、「レーザーを3回照射し、6ヶ月後に67%以上の毛が減少している状態であること」とあります。つまり、残りの33%の毛は再生していても問題ないとされているのです。

カードローンの窓口合同会社 編集部:かなり厳密に定義されているのですね!では、もう1つの定義についても教えていただけますか?

楢村准教授:もう1つの定義は、アメリカの電気脱毛協会によるものです。電気脱毛協会は、「最後に脱毛が終わった時から1ヶ月後に毛の再生率が20%以下の状態であること」を永久脱毛の条件としています。

つまり、どちらの定義においても、「永久脱毛」とは完全に毛が生えてこなくなることを指しているわけではなく、「長期的に安定して毛が減少すること」を指しているのです。

また、根本的な話になりますが、実はFDAも電気脱毛学会も「永久脱毛」という表現自体を使っていません。

カードローンの窓口合同会社 編集部:そうなると、「永久脱毛」という言葉自体、日本独自の表現ということでしょうか?

楢村准教授:その通りです。たとえばFDAの文書には「Permanent Hair Discontinuance(永久的な減毛)」という言葉が使われています。

「永久脱毛」と「永久減毛」では、明確にニュアンスが異なるのがお分かりいただけるかと思います。

このように、永久脱毛という言葉自体は日本で作られた言葉です。そもそも言葉の定義自体がないというのが正しいと言えるでしょう。

カードローンの窓口合同会社 編集部:ありがとうございます。具体的な定義を知らず、広告などで書かれている「永久脱毛」の言葉だけで脱毛を受けるか判断するのは危ないかもしれませんね。

楢村准教授:はい。最近では、カウンセリングの場で「永久といっても再生する可能性がある」と説明する施設も増えています。

ただ、集客を意識したホームページや広告では、その点に触れずに「永久脱毛」とだけ記載しているケースも少なくありません。

ですから、まずはカウンセリングでしっかりと説明を受けることが重要です。その上で、自分に合った脱毛方法なのかどうかを冷静に判断することをおすすめします。

リスクゼロではない脱毛、安全性と責任を考える

カードローンの窓口合同会社 編集部: 2022年の国民生活センターの発表によると、エステ脱毛による火傷の報告が1万件を超えていたそうです。脱毛において、こうしたトラブルが発生した場合、その責任はどこにあるのでしょうか?

楢村准教授:まず、トラブルの責任の所在は100%施術を行ったサロン側にあります。

そのため、もし脱毛でトラブルが起きた場合は、サロン側がお客様と話をして、その後どういう対応や処置をするのかを決める必要があるのです。

ただし、サロンでは医療的な処置ができないため、火傷などがあった場合は、病院で治療を受けていただく形になります。

ここで問題になるのは、「火傷を起こす=細胞が壊れている」という点です。

美容脱毛は、本来は毛を生やす細胞を破壊しないレベルで行うものであり、医療行為には該当しないとされています。

ところが、火傷が起こったという事実は、その細胞にダメージを与えるような高出力の照射が行われたことを意味します。

つまり、サロンが医療脱毛レベルの施術を無資格で行ったと判断される可能性があり、この場合には刑事責任を問われることもあるのです。

カードローンの窓口合同会社 編集部:刑事責任まで発展してしまう可能性があるのですね。この時、火傷を負う原因の1つでもある脱毛機について、そのメーカーに責任は問われないのでしょうか?

楢村准教授:はい。基本的には脱毛で起きたトラブルの責任はサロン側にあります。

火傷が発生したのは、あくまで機器の出力設定を誤ったサロン側の対応に問題があるからです。

したがって、装置そのものに欠陥がない限り、メーカーが責任を問われるケースは極めて少ないと言えます。

なお、先ほどもお話ししたように、サロンでは医療治療ができません。

最終的には、提携クリニックの紹介や治療にかかった費用の負担について、サロンとお客様で相談していただく必要があるかと思います。

カードローンの窓口合同会社 編集部:では、ここまでのお話を踏まえて、消費者がトラブルに巻き込まれないための方法があれば教えていただけますか?

楢村准教授:最も大切なのは、消費者自身が知識を身につけることです。

広告やSNSでは、脱毛のメリットばかりが強調されがちですが、施術の仕組みやリスクについても自分で調べて理解しておくことが必要です。

その上で、信頼できるクリニックやサロンを選んでいただきたいと思います。

また、施術を行う側、つまりスタッフの知識や技術の向上も非常に重要です。

私が顧問を務めている美容機器メーカーでは、販売前に購入者(施術者)に研修を受けて頂くことを義務づけており、定期的な勉強会も実施しています。これは、スタッフの知識を定着させ、適切な施術が行えるようにするための取り組みです。

このように、消費者と施術者の双方が正しい情報を持つことが、脱毛トラブルを未然に防ぐ最大のポイントになると考えています。

カードローンの窓口合同会社 編集部:ここまでのお話は、主にクリニックやサロンでの脱毛に関するものでしたが、最近ではセルフ脱毛も人気です。セルフ脱毛でも火傷などのリスクはあるのでしょうか?

楢村准教授:はい、最近はセルフ脱毛によるトラブルが多発しています。

セルフ脱毛では、利用者自身が業務用の機器を使い、自分の好きな部位に好きな出力で照射することが可能です。

その結果、過度に高い出力で何度も照射してしまい、火傷を負ってしまうケースが少なくありません。

カードローンの窓口合同会社 編集部:なるほど。一歩間違えれば医療行為にもなりかねない脱毛を、正しい知識や技術がないまま自分で行うのは、やはり危険ですね。

楢村准教授:その通りです。基本的に、正しい知識を持つ施設で施術を受ければ、火傷が起こることはありません。

火傷などのトラブルが起きるのは、過失があった場合や、セルフ脱毛で無理な使い方をしたときがほとんどです。

カードローンの窓口合同会社 編集部:セルフ脱毛といえば、家庭用脱毛機も人気ですよね。家庭用の機器も同様に危険なのでしょうか?

楢村准教授:家庭用脱毛機については、出力がかなり低めに設定されているため、基本的に火傷のリスクは非常に低いです。

ただし、業務用の機器を個人で使用するのはやはり危険です。

業務用機器は本来、専門知識を持つスタッフが使用することを前提として設計されていますので、素人が自己判断で使うのは避けたほうが良いでしょう。

カードローンの窓口合同会社 編集部:いずれにしても、正しい知識を身につけた上で施術を行うことが、脱毛を安全に受けるための前提条件になりますね。

ところで、脱毛に向いていない方や、避けたほうが良い人もいるのでしょうか?

楢村准教授:はい。皮膚に疾患のある方や、長期間薬を服用している方は注意が必要です。

例えばアトピー性皮膚炎など、慢性的な皮膚疾患がある場合は、照射によって炎症が悪化するリスクがあります。

また、薬の中には光を吸収しやすい性質を持つものもあり、そうした薬を服用していると、照射時に熱が発生しやすくなり、火傷の原因になってしまうのです。

なお、病院では服用している薬の種類や皮膚の状態をもとに、脱毛が可能かどうかを医師が適切に判断してくれます。

そのため、これらのケースに該当する方は、医師に相談した上で脱毛を検討することをおすすめします。

後悔しない脱毛選び‐情報の見極めとゴール設定

カードローンの窓口合同会社 編集部:最近はSNSやインフルエンサーの投稿を参考に、脱毛クリニックを選ぶ方が多いかと思います。そのような中で、信頼できる施設かどうかを見極めるには、どのような点に注目するべきなのでしょうか?

楢村准教授:広告や口コミだけでは判断が難しい面もありますが、極端に低価格を打ち出している施設には注意が必要です。

たとえば「初回500円」「1回1,000円」といった安価なプランを掲げていても、実際には高額な長期契約を勧められるケースもあります。脱毛は1度行った程度では殆ど効果はありませんから。

カードローンの窓口合同会社 編集部:なるほど。入口の価格に惹かれてしまいますが、その後の契約内容こそしっかり確認すべきなのですね。

楢村准教授:その通りです。さらに最近では、倒産してしまう脱毛サロン・クリニックも増えています。

こうした施設の多くは、広告に多額の費用をかけている傾向があります。

例えば有名な芸能人を起用したり、大々的にプロモーションを行ったりしている施設では、広告費を維持するために毎月かなりの出費が発生します。

その結果、顧客数が減ると自転車操業に陥り、資金繰りが悪化して突然の営業停止に至る可能性もあるのです。

もちろん、広告に力を入れているすべての施設が倒産のリスクを抱えているわけではありませんが、1つの見極めポイントとして頭に入れておくと良いでしょう。

カードローンの窓口合同会社 編集部:脱毛の広告というと、最近はサブスク型や通い放題の脱毛サロンもよく見かけます。そういった形式のプランを検討する場合、どのような点に注意すべきでしょうか?

楢村准教授:予約の取りやすさは必ず確認しておきたいポイントです。

たとえば「通い放題」とうたっていても、3ヶ月先まで予約が埋まっているような施設もあります。

その状態で施術が受けられないのに、支払いが一括払いで返金もされないとなれば、消費者にとっては大きな損失です。

そのため、事前に「予約は取りやすいか」「都度払いが可能か」「解約時に返金対応があるか」など、契約内容をしっかり確認することが重要です。

カードローンの窓口合同会社 編集部:確かに、脱毛にはまとまった金額が必要になるからこそ、納得いくまで契約内容を把握しておきたいですね。他にも、施設選びで気をつけるべき点はありますか?

楢村准教授:施設そのものとは少し離れますが、まずは本当に自分に脱毛が必要なのか、一度立ち止まって考えてみることも大切です。

最近はSNSなどで脱毛の広告が頻繁に目に入るため、「みんなやっているから自分も」「脱毛していないのは遅れている」と感じる方も少なくありません。

しかし、脱毛には多額の費用と長い期間がかかります。その上で、「本当に自分は脱毛したいのか」をしっかり考え、施設選びを進めていただきたいと思います。

カードローンの窓口合同会社 編集部:ありがとうございます。では最後に、誰にでも共通する「脱毛で後悔しないためのポイント」があれば教えていただけますか?

楢村准教授:まず大事なのは、サロンやクリニックに行く前に自分の希望を明確にしておくことです。

完全に毛がなくなるまで脱毛をしたいのか、自己処理が楽になる程度で良いのか、他人から見て分からないレベルになれば良いのか。

これをはっきりさせておかないと、必要以上の契約をしてしまう可能性があります。

カードローンの窓口合同会社 編集部:自分のゴールを明らかにした上で契約することが重要なのですね。

楢村准教授:はい。ゴールを明確にせずにサロンやクリニックへ行ってしまうと、スタッフのセールストークに流されて、本来必要のない部位やオプションまで契約してしまうケースもあります。

もちろん、施設側も契約を取るために魅力的な言葉を使ってきますが、それに左右されず、自分の希望・予算・通える頻度などをあらかじめ整理しておくことが、後悔のない脱毛につながります。

さらに、脱毛を始める際にぜひ理解しておいてほしいのが「毛周期」という考え方です。

カードローンの窓口合同会社 編集部:「毛周期」とは何でしょうか?

楢村准教授:毛周期とは、毛が生えて成長し、抜け落ちて、再び生え始めるまでのサイクルを指します。

人間の体毛のうち、表面に見えているのは全体の3割程度に過ぎません。残りの7割はまだ毛として存在しておらず、月日が経つと生えてきます。

つまり、脱毛をして一度毛がなくなったように見えても、数ヶ月後にまた毛が生えてくるのは当然のことなのです。

カードローンの窓口合同会社 編集部:ということは、脱毛を受ける際には毛周期を意識してスケジュールを立てなければならないということですね。

楢村准教授:その通りです。毛周期を無視して頻繁に照射しても、十分な効果は得られません。

毛周期の目安としては、およそ1年半で4サイクル回ると言われています。そのため、1年半程度かけて計画的に施術を行うことが、高い効果を得るための理想的なスタイルです。

カードローンの窓口合同会社 編集部:なるほど。これが、先ほどお話しいただいた「予約の取りやすさが大切」という点にもつながってくるのですね。

楢村准教授:はい。予約が思うように取れなければ、毛周期に合わせた計画的な施術ができません。

ですから、料金の安さだけで判断せず、予約の取りやすさや通いやすさも含めて施設を選ぶことが、最終的に満足のいく脱毛につながるのではないかと思います。

取材・記事執筆:カードローンの窓口合同会社 編集部
取材日:2025年5月9日

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